ひとくちに「ダイヤモンド工具」と言っても、中身は大きく3種類に分かれます。
単結晶ダイヤモンド(SCD)、焼結ダイヤモンド(PCD)、CVDダイヤモンドです。
この3つは価格も用途もまったく違います。
選び方を誤ると、「高い工具を買ったのに面粗さが出ない」という事態になりかねません。
この記事では、加工目的から逆算した選定の考え方を整理します。
3種類の違いを一枚で
| 種類 | 構造 | 刃先の鋭さ | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| 単結晶(SCD) | ダイヤモンドの単一結晶 | もっとも鋭い(原子レベルの稜線) | 鏡面加工・光学金型・超精密加工 |
| 焼結(PCD) | 微粒子を結合材で焼結 | 粒子径ぶん丸くなる | アルミ・複合材の量産切削 |
| CVD | 気相合成した多結晶膜 | 中間的 | 耐摩耗部材・特殊形状 |
決定的な違いは「刃先をどこまで鋭くできるか」です。
なぜ鏡面加工には単結晶しか使えないのか
PCDは、細かなダイヤモンド粒子を結合材で固めた材料です。
研ぎ上げても、刃先の稜線は粒子の大きさぶんだけ凸凹になります。
粒径が数µmなら、その凹凸がそのままワークに転写されます。
一方、単結晶ダイヤモンドは結晶がひとつながりです。
そのため、理論上は原子の並びに沿った稜線まで研ぎ上げられます。
面粗さ Sa 1nm を下回るような加工が成立するのは、この構造があるからです。
実際の加工例では、無電解ニッケルめっき(Ni-P)の非球面金型で
Sa 0.225nm を実測しています(加工事例はこちら)。
単結晶が「使えない」ケースもあります
もっとも重要な注意点は、鉄系材料の切削には向かないということです。
ダイヤモンドは炭素でできています。
高温下で鉄と接触すると炭素が鉄に拡散し、刃先が急速に摩耗します。
このため、鋼やステンレスの通常切削にはCBN工具などを選びます。
逆に、単結晶ダイヤモンドが強みを発揮するのは次のような材料です。
- 無電解ニッケルめっき(Ni-P)——光学金型の定番
- アルミニウム合金——ミラー、ポリゴンミラー
- 銅・黄銅——電鋳マスター、放熱部品
- 樹脂・アクリル——導光板、レンズ
- ゲルマニウム・シリコン——赤外光学部品
選定は「材料 × 目標面粗さ × ロット」で決まる
実務的には、次の順で考えると迷いません。
- ワークは鉄系か——鉄系ならダイヤモンド系は除外し、CBNへ
- 鏡面(Sa数nm以下)が要るか——要るなら単結晶一択
- 数量はどれくらいか——大量切削で面粗さ要求が緩ければPCDが経済的
- 形状は特殊か——複雑形状はオーダーメイド設計の出番
当社では、ワーク材質・目標精度・使用加工機をお聞きしたうえで、
刃先形状から設計してご提案しています。
取り扱い品目は事業内容をご覧ください。
よくあるご質問
Q. 単結晶ダイヤモンド工具は高価ではありませんか?
A. 1本あたりの単価はPCDより高くなります。ただし再研磨して繰り返し使えるため、
加工1個あたりのコストで比較すると逆転することも少なくありません。
Q. どの種類が必要か、まだ判断できません。
A. 図面がなくても構いません。「この材料を、この面粗さで削りたい」だけでご相談いただけます。
工具選定からご相談ください
「材料は決まっているが、工具の仕様が決まらない」——
その段階からご相談いただくほうが、結果的に近道になります。

